吃音:どもり

吃音の概要
吃音は発話に関係した流れやリズムの混乱として定義することができます。通常は、音節の繰り返し(例えば、バフ-バフ-バルーン)、特定の音の延長(例えば、フフフフフェザー)、そして不定期に空気の流れが中断する(即ち、声帯を通過する空気の流れが止まり、声帯の振動が止まる。そして音が発生しなくなる。)といった特徴があります。 

吃音に先だって、特定の二次的な現象が起きます。声帯、舌、唇、顔の筋肉組織での極端な緊張が「葛藤行動」-しかめっ面、顔面けいれん、頭のけいれんなどを引き起こします。ほとんどの吃音がある人は、特定の言葉や話をする状況に対する恐れが生じて、それを避けようとします。

何百年もの間、吃音の原因と処置は、吃音に悩む本人とそれを処置しようと試みる人のどちらにとっても頭を悩ませる問題でした。発話の障害全体の中で、吃音は最も研究されているし、かつ最も不可解なものです。特に最近の50年では、医学雑誌や医療従事者の雑誌は科学的な研究と病歴で溢れています。結果的に吃音に関する身体的な特徴について、非常に大量の事実が集まりました。しかし、吃音に対する原因と処置に関しては、集まった知識から意見の一致に至っていません。 

吃音の原因には、文字通り何百もの説があります。それぞれの説はいくつかの研究に裏付けられ、特定の処置方法を生みだしています。しかし、これらの説は4つのカテゴリーに纏めることができます。

1. 器官説 このグループの説は、どの時代でも最も広く行き亘っています。基本的に吃音はそれを患っている人の何らかの身体的な欠陥によると説いています。関連した発話は、複雑なタイミングと多くの同時の動き(肺、声帯とその周りの筋肉組織、軟口蓋、舌、唇などの動き)の協調が必要なので、これらの機能がどれか1つでも停止すると発話のリズムが乱されます。話し言葉を成り立たせるのに必要な、事実上すべての器官がいつしか欠陥のあるものとなっているのです。その欠陥は「凍った」舌、腫れた扁桃腺、特定の神経の機能障害や脳の病変といったものです。  

エドガー・ケイシーのリーディングに含まれている情報に照らしてみると、1つの説-シーマン(1934)の説が特に興味深いです。シーマンは自律神経システムの交感神経の部分が、情緒的な緊張や大脳皮質からの抑制がなくなることで、異常に活性化されると考えました。このエネルギーの「過剰供給」が発話の元になっている基本的なプロセスをすべて阻害しているのです。

2. 神経症説 フロイトの時代以降、吃音は何か深く根ざした情緒的なまたは心理的な問題の結果であると見なすことが注目されました。この特定の学派によると、吃音の患者は情緒的な発達の口や肛門のレベルで立ち往生している、あるいは深刻な適切でない個人的関係を経験していると考えられました。現在、多くの療法士が依然として吃音の患者を基本的に神経症であると見なしています。

3. 学習説 歴史的に多くの人が吃音を悪いくせのひとつと見なして来ました。60年代の調査で、幼稚園の子供のうち約80%が短期の「正常な流暢でない」時期を過ごし、それは吃音と容易に混同されるということが示されました。学習論者によると、この流暢でない状態は、子供の両親、友達、教師などの反応によって吃音に至ることもあり得ます。子供は周りの人の反応によって話すことを恐れるようになり、この恐れが滑らかな発話に必要な複雑な協調のパターンを乱して、吃音を増加させます。

4. 聴覚フィードバックの混乱説 私たちはみな自分の発話をモニターするために感覚のフィードバックを頼りにしています。もし口蓋の局部的な知覚麻痺で運動(触覚)フィードバックが奪われると、その人の発話が不明瞭になります。もし聴覚のフィードバックが遅れると(遅れが組み込まれているテープレコーダーを使うことで)、正常な話し手も吃音で生じるのと非常によく似た流暢さの破壊に悩まされます。このことで、発話をモニターするために用いられる聴覚フィードバックシステムの何らかの歪で吃音が生じているという説に至ります。

それぞれの学派は支持する病因に関係した処置の方法を編み出しました。

器官説の理論家は、潜在する身体の欠陥に対する処置-つまり、舌をなめらかにするためにワインを飲むこと、扁桃腺を切除すること、パターン化した運動によって中枢神経系を訓練することなど-を提案します。 

神経症学派の信奉者は、流暢でない状態を克服するために、精神分析療法、グループセラピー、そして手順に従って感度を下げることを行います。学習説の理論家は、子どもの吃音に対する両親の反応を変えたり、特定の吃音のクセを無くそうと試みます。その他の療法士は、混乱した聴覚フィードバックを「ホワイトノイズ」で覆い隠したり、フィードバックを少し遅くしようとします。(吃音の人はフィードバックが遅れると、流暢さが改善されます。) 

エドガー・ケイシーは、自分は吃音だと思っている、あるいは、両親がそうだと思っている10人の個人に対してリーディングを与えました。

しかし、その内の2人[2705]と[2441]は、彼らの問題は吃音ではないと言われました。それはむしろ適切な言葉を選ぶことや、想いを言葉に置き換えるのが難しかったのです。(これらは、吃音で見られる運動発話の困難ではなく、言語形成の問題です。)

21歳の[3245]は、彼の口ごもりは-それが実際どんな状態であったとしても-「「理想のうちに身体を信じるなら」対処することが出来るとライフリーディングで言われました。「ただし、自身の理想においてではなく、主の理想において」 (3245-1)

※〔〕()内の数字は、リーディングの通し番号

以上3つのリーディングは回覧ファイル(※症状別にリーディングを分けたファイル)には含まれていませんでした。また、2歳の子供[402]に対するリーディングも除外されました。その子の吃音は主要な病気に対して二次的なものでした。一般的な状態が改善されるにつれて、その子の発話はよくなるだろうという記述以外には、吃音について非常に僅かな情報しかありませんでした。脊椎マッサージをするよう、提案がありました。

残りの6つのケースの中で、3つだけは、吃音が主要な問題でした。[605]、[1788]そして[2015]です。この内、[605]だけに吃音に関するフォローアップリーディングがありました。

これらを除く残りの3つのケースでは、吃音は全体的な混乱した身体の機能の中では比較的小さな問題でした。33歳の[99]は、めまい、血液の不均衡、脾臓と肝臓の問題、心臓神経叢の病変、そして消化システムの問題を起こしていました。5歳の子[1490]は、分泌腺(特に甲状腺と副腎)の機能障害による外観を損なう皮膚の状態、体内の塩分の不均衡、第6、第7脊椎の圧迫(亜脱臼)による神経システムの協調不全、並びに尾骨の病変がありました。

9歳の子[1817]に対しては、吃音は片方の目の失明と腎臓の機能障害による二次的なものでした。これらの3つのケースでは、この状態に対する処置は吃音に対して具体的に提案された処置とは分けて考えなければなりません。

I. 生理学的な考察

リーディングによると、「話の感覚は生命体の中で最も高度に発達した振動である」ゆえ、他の全ての感覚からの情報に依存しており、従って体の協調能力に大きく依存している。この「協調する能力」は、(無意識のこころや想像力に富んだ体と繋がっている)交感神経システム、脳脊髄神経系、「脳でインパルスを記録する(146-1)」神経系のコネクションを含んでいます。 言い換えれば、なめらかではっきりした発話は、交感神経システムと脳脊髄神経系の両方からのインパルスの協調に依存しているのです。

具体的に何が吃音の原因かと尋ねたら、ケイシーは次の通り答えました。「身体の聴覚力の接続ならびに発声力の接続は、頸椎3番からのインパルスと、胸椎の3番、4番、5番のインパルスから派生している」

「それ故、とても忍耐強く、しかしながらきわめて体系的に・・・声帯にエネルギーを過剰に送り込んでいる傾向を緩和する必要がある」(1788-13)

このリーディングによれば、これら脊椎に存在する圧迫は、神経への圧迫を生じさせ、神経系の協調不全を引き起こすことがあります。そして、その協調不全が(ブルブルとかブンブンいう耳鳴りから難聴に亘る)聴覚機能の混乱と(吃音、無言症、「不明瞭な話」を含む)発声機能の障害に結びついているのです。他のリーディングでは言語障害(その内いくつかは吃音と似ているかも知れませんが、言葉の修正の問題により関わりが大きいと思われます。)の要因として脊椎神経節の混乱を挙げています。 

これら6つのリーディングでは、脊椎の上部と頸椎の部分の圧迫と亜脱臼が吃音の原因として関係しているとはっきりと述べています。

5つのケースで、吃音は具体的に脊椎の上部の問題と関係していました。第3脊椎は常に関係していました。第4と第5脊椎は頻繁に関係していました。第2脊椎の問題は2つのリーディングで言及されています。 

6番目のケース[1490]では、脊椎の上部には具体的な問題は指摘されていません。しかし、一旦脊椎の下部に対する具体的な矯正の提案がされて以降は、脊椎の上部と頸椎のオステオパシーの調整が提案されました。(脊椎の下部の亜脱臼は、吃音ではなく子供の腺分泌の不足と関係していました。)

3つのケースで、リーディングは要因として第3頸椎を具体的に言及しています。4番目のケースでは頸椎に沿った圧迫が述べられていました。そして、もちろん[1490]は脊椎に沿った頸椎のオステオパシー調整を行うように言われました。

2つのケースで、明白な吃音がブンブンいう音やブルブルいう音の耳鳴りと一緒にありました。もう1つのケースで、亜脱臼が聴力の特定できない「偏り」を起こしていました。これが吃音の要因として述べられていました。4番目のケースでは、聴覚の問題が指摘されていました。その子供は正常で鋭い聴力を持っていましたが、聴覚刺激に対する把握や反応がゆっくりでした。従って、6つのケースの中で、4つに何かしら聴くことの具体的な問題がありました。

3つのケースで、脊椎の問題が影響を受けた部分(喉、喉頭、へんとう腺と咽頭へんとう腺)を通る血液の循環を妨げたり、遅れを生じさせていました。そして1つのケースでは血液がこれらの部分に滞っていました。この3つのケースで排泄不良が影響を与える要素でした。

従って、要約すると、リーディングの資料は吃音の原因について、主に2つの共通した説に集約されます。発話の問題は、それが脊柱の亜脱臼や圧迫が原因なので、明らかに器官的な要因です。「これらの原因は、正常な流れ、正常なインパルス、気管支・喉・声帯・頭と喉の器官を通した正常な神経活動を妨げている」(605-2) 

別のリーディングで、更に限定的に「声帯へのエネルギーの供給過剰」を含む正常な流れの不足を原因としました。(1788-13)  更に、このリーディングでは聴覚の混乱が要因であるとする説を支持しています。

[1490]では明らかに聴覚フィードバックが遅れていますが、[2015]では、「話声にその兆候が現れている聴力の偏り」がありました。(2015-8) 

別の2つのケースでは「頭の雑音」-ブンブンとかブルブルいう耳鳴りがあって、それが聴覚に影響を与えていたでしょう。学習説に関しては、一組の両親が、「心配のあまり、意見のあまりの違いを矯正しようとしたり、本人がそれを意識しすぎるようにしないことだ」と助言されました。(1788-13)

[605]は「身体がいらだちを覚える傾向を克服することに留意すること。そうすれば、サ行発音不全と言葉の詰まりは解消できるだろう」と言われました。(605-3)このリーディングでははっきりと心配と不満が吃音を悪化させると述べられていました。

II.   治療の論拠

全てのケースで提案された基本的な処置は、脊椎の影響を受けた部分をオステオパシーやカイロプラクティックで矯正することでした。規則正しい一連の矯正が最も頻繁に提案されました。例えば、週に2~3回、数週間。 

[605]は脊椎の亜脱臼を矯正するのが特に難しかったので、より集中的な処置を行うよう提案されました。3人の最も小さな子どもたち(回覧ファイルにリーディングが含まれていない[402]も入れて)には、ピーナツオイルを用いた脊椎のマッサージも出来れば毎日行うよう提案されました。

背中と首の部分全体に亘るマッサージも[605]に対して提案されました。([1490]に対して提案されたマッサージの種類は、吃音ではなく彼女の皮膚の状態に明確に関係していたことに注意して下さい。)沢山のリーディングで、態度という要素は、身体の矯正と同じくらい重要であると考えられています。[605]は次のように言われました。「これらの状況になって、精神的な身体(mental body)において通常の活動を続けるのだという決定、障害を取り除くのだという決定を最初にしなくてはならない。なぜなら、精神的な身体の活動なしには、たとえオステオパシーによって(身体的な)変化があっても、部分的な矯正となってしまうからだ」彼女はまた「注意深く、苦痛なほど注意深く、表現することに心をとめる」ように言われました(605-1)。 

2年後、(不完全な処置をしたために)彼女の吃音が再発した際には、[605]はそのフラストレーションに留意するように提案されました。

[1788]の両親は子どもが治療の有益な結果を期待する態度を育成するように言われました。「(4歳半という幼さにも関わらず)本人に対して、行われている治療の内容と、その理由、そして指示された治療を行うことで期待される効果について、よく説明して知らせておくこと。」(1788-13)

第3、第4脊椎には消化器官に繋がる神経接続があるので、6つの内3つのケースでは酸性過多や排泄不良という問題がありました。これらのケースの内2つに対して、アルカリ反応食事療法が提案され、一人の子供には更に消化管を浄化するためにグライコサイモリンの使用が提案されました。他の2つのケースでは、一般的な身体を創る食事療法が提案されました。 

その他の処置の提案はこれらの6つのリーディングで見つけることが出来ます。しかし、そのほとんどは、明確に吃音以外の状態に関係したものです。 

例えば、[1490]では、彼女の内分泌腺の分泌不足を克服するために、アトミダインの服用とウェットセル装置の使用が提案されました。[991]は白血球と赤血球の間の不均衡を是正するために処方を与えられました。また強い電気振動治療も提案されました。色々な他の様式の電気治療が提案されましたが、ただ1つだけが吃音の問題に関係しているようです。即ち、[6051]は喉と頭を通る血液の循環を改善するために、神経インパルスを調和させる透熱療法を行うように提案されました。

まとめると、脊椎と頸椎の調整が永続するために十分なオステオパシーやカイロプラクティックの矯正を受けることが最初に提案されました。

滑らかな発話にたどりつくためには、態度も非常に重要でした。アルカリ反応の食事療法はしばしば提案されました。リーディングではこの食事療法を優れた健康のためにも最適なものとして一般的に紹介していました。他の治療は他の状態に限定されたものと思われましたし、一般的に吃音に対して提案されませんでした。

注意:[605]に対するリーディングは部分的に矯正すること(即ち、脊椎の再調整を確実にするのに十分なだけの矯正を行わないこと)に対して警告しました。恐らく[605]は十分な回数の矯正を行わなかったため、2年後、彼女の吃音の症状はよりひどくなって再発したのです。

[注記:上記の解説はLesley Laraby Boykin, DSPA, CCC-SPが書いたもので、Physician's Reference Notebookからの抜粋です。]

脚注:上記の情報は、自己診断や自己処置を目的としたものではありません。ケイシーの健康データベースの情報を利用するに当たり、資格をもった健康管理の専門家にご相談ください。

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翻訳:岡田栄(一部リーディングは光田秀)